Solution

自動精緻解体システム

高度なロボット/AI技術を用いた自動精緻解体システム

BlueRebirthの実現に向けて、ELVの解体から再資源化までのプロセスを自動化する「自動精緻解体システム」の開発に取り組んでいます。ロボティクス技術やAIを駆使した認知・判断技術を活用し、自動車産業のサーキュラーエコノミーへの移行を実現するための中心的なソリューションに位置づけ、自動車産業における資源循環を加速させることを目指しています。

「質・量・経済合理性」を追求する「質・量・経済合理性」を追求する

「質・量・経済合理性」を追求する

自動精緻解体システムが目指すのは「質・量・経済合理性」を担保した解体プロセスの構築です。バリューチェーン全体の中から効率化するべき箇所に自動化ツールを導入し、最大効率で稼働させるための解体システムの実現に取り組みます。目標は、ELVの再資源化に向けたプロセスを1台900秒以下で完了させ、バリューチェーン全体では年間100万台ほどの車両を国内で再資源化することを掲げています。

各種車両に柔軟に対応できる解体プログラム各種車両に柔軟に対応できる
解体プログラム

各種車両に柔軟に対応できる解体プログラム

ELV解体は、膨大なバリエーションに対応しつつ、経済合理性を担保した解体プロセスが求められています。そこで、自動精緻解体システムでは、徹底的な「標準化」に取り組みます。ELVは複数車種が存在するものの、決まった塊にして切り出すことで、分解時のハンドリングが標準化できます。この特徴を利用することで、解体プロセスのバリエーションを極限まで減らし、標準化したバリューチェーンを構築します。

主な解体プロセス

「⾃動精緻解体システム」により、解体プロセスが自動化され、生産性の大幅な向上が期待されます。さらに、解体後の部品や材料の選別が精緻化されることで、再生材料の純度が高まり、製造業者に安定的に高品質な再生材料が供給されます。

主な解体プロセス主な解体プロセス

クルマ分断・分解

ELVの再資源化に向けたプロセスを1台900秒以下で完了させるために、まず実施するのがクルマの分断のプロセスです。クルマの分断工程では、回収されたELVを台車に載せたまま反転機に載せ替え、電池や触媒などを取り外します。その後、レーザーによって解体しやすいように分けられたユニットへと分断します。その後、切り出したユニットから各種部品を取り出し、ハンドリングを標準化するアタッチメント治具を取付けてロボットの高効率な動作を実現します。従来の解体プロセスには存在しなかった本工程を行うことで、ロボットを活用したシステムの生産性向上を目指しています。

人間の高度な技術をロボットが学習する

自動精緻解体システムの実現に向けて重要なのは、複数の車種を分解できるロボットプログラムを効率よく作成する仕組みづくりです。BlueRebirthではこの課題に対し、人がもつ解体ノウハウを形式知化することから取り組みます。クルマの分断・分解の工程において、人がロボットを操作したプロセスをAIに学習させ、同じ車種や車両の備品に対してロボットのみで自動で解体を行えるようなアルゴリズムを生成します。
具体的には、デンソーが開発に関わった手術支援ロボットを活用し、「Human Machine Interface(HMI)」の直感性を高めることで、どのような自動車メーカーのELVにも対応する分解プログラムを、誰もが容易に生成ができる仕組みをつくります。この活動を通じて取得できる解体データを活用し、将来的にはAIを用いた解体プロセスの生成に取り組みます。

部品分解

本プロセスにおいては、シンプルなモジュール構成の設備での部品分解が可能になっています。部品解体の精度を高めるために、自動精緻解体システムではデジタルツインを活用したシミュレーションと、車両解体データ収集アプリの構築に取り組んでいます。

分解データ収集

ELVに取り付いている部品は様々な使われ方をしており、一つひとつのコンディションが異なります。そこで、各部品の形状や劣化の度合いを記録し、ビックデータとして蓄積するデータベースを構築しています。これらのデータをAIに学習させることで、そのバリエーションに正確に対応できる部品解体の仕組みを構築します。

デジタルツインを活用した解体シミュレーション

フィジカル空間(現実世界)に存在する製品や製造設備の情報や環境データなどをリアルタイムに収集し、サイバー空間(仮想世界)に送ることで同じ状態・状況を再構築する「デジタルツイン」という技術があります。自動精緻解体システムでは、フィジカル空間で取得した分解データを機械学習し、そのプロセスのシミュレーションをデジタルツイン上にて実施しています。デジタル空間上で、様々なカイゼンのアイデアや新しい分解プログラムを作成することで、フィジカル空間の稼働を阻害せず、さらに効率を高める開発に並行して取り組むことができます。

素材分離

分解された部材の素材を特定します。そして、材料リサイクル工程における運搬効率を高めるために、素材ごとに分類された部材は破砕します。最後に配された部材は素材ごとに層別され、トレーサビリティを付与して出荷されます。出荷の際、分解された部品からは異物を取り除くだけではなく素材をしっかりと層別することを重視します。素材をきめ細かく検査し、保証を添えて出荷します。

分離サンプル

分離技術

分解された部品はその場で識別されます。素材同士の接着において、さまざまなバリエーションがあるため、それぞれに最適なアプローチを構築する必要があります。そのため分解技術に加えて分析技術にも力を注いでいます。

レーザー波長の分析画面(引用元: NIST LIBS Database)

素材の配合を判別する検査技術

レーザーや分光器を用いて、各素材の成分や詳細を検査します。ロボットで分離できないものは、特別なケアを施して単一素材へ分離。モノづくり企業のプライドをかけて徹底的にターゲット素材を抽出します。

トレーサビリティイメージアプリ

トレーサビリティ

デンソーウェーブが開発したQRコード®を用いて、各部材のトレーサビリティを担保します。この仕組みを導入することで、再資源化された部材が次のクルマにどのように活用されているのかを追跡することができます。