自動車リサイクルの未来を担う現場の声─The Voice of the Engineers

自動精緻解体システムの可能性──自動車リサイクルの未来を担う現場の声

自動精緻解体システムの実現に向け、リサイクル原料製造メーカー各社と連携のもと、実証実験に取り組んでいます。この度、実証実験に協力してくれた各社の現場メンバーとともに座談会を実施。議論のなかからは、システムと業界が直面する課題と今後の可能性が見えてきました。

酒井みなさん、BlueRebirthプロジェクト(以下、BR)における自動精緻解体システムの実証実験にご協力いただきありがとうございます。私は自動精緻解体システムのロボティクスにまつわる設計開発を担当した立場で参加していましたが、今日はぜひ、解体の現場の課題や自動精緻解体システムによって切り拓かれる未来について、議論を深めていきたいと思っています。簡単に自己紹介からお願いできますか。

天野リバーのELV(使用済自動車)事業部で、ELVの部品の取り外しや販売を担当しています。自分が担当している販売先は海外のバイヤーさんが多いのですが、販売した部品がどのように再利用されているか、よく写真を見せてくれるんです。日本で不要になった部品が、海を超えて新たな役割を与えられている様子を見ると、とてもやりがいを感じますね。

佐藤マテックのELV部門で、ELV車両の解体計画のディレクションに従事しています。解体した部品の再資源化のプランニングなどをする関係で、リサイクル全般の知識が自然と深まっていくところに、この仕事の面白さを見いだしています。

久保金城産業でELVの部品取り外し選別、在庫管理を担っています。ニーズが高そうな部品の一部はオークションに出品することもあるのですが、そこですぐに買い手がついたり、予想以上の価格で落札されたりすると「必要とされていたものを届けられてよかったな」と、うれしく思います。

本村九州メタル産業でフロン類やエアバッグの回収、液抜きといったELVの解体前に行う事前処理を担当しています。最近の仕事の楽しみはバイヤーさんたちと雑談をすることで、彼らの話を聞きながら「こういうサービスも提供できたらよさそうだな」などと想像しています。

現場の業務負担の軽減への期待

酒井現在、実証実験で使用いただいている自動精緻解体システムは、主に取り外した部品を再資源化のために小さくバラバラにする工程で、人が作業している様子を記録し、そのデータを取り込んでロボットに同様の作業をさせることを目指しています。皆さん、実際に使用いただいていかがでしたか?

天野「これが実用化されたら、現場の業務負担は本当に大きく軽減できるだろうな」と感じています。しかし現在のシステムでは、たとえばラジエータをエアーソーで切る工程がどうしてもうまくいかなかったり、少し錆びている部分があるとそこで作業が止まってしまったりと、改善するべきポイントがいろいろと見えてきたな、という所感です。

BlueRebirthが各社の連携のハブに

本村今回のプロジェクトに参加して一番よかったと感じているのが、こうして他社の皆さんとの親睦を深めながら、技術的な情報交換や議論ができることです。BRという場があるからこそ、ここまで深い交流を持つことができたし、とてもいい刺激をもらっています。

天野存在は認知はしつつも、現場レベルでの交流機会はこれまでほとんどなかったですよね。各社の工夫や取り組みを直接見聞きさせてもらえて、本当に感謝しています。マテックさんは徹底的に細かく解体することが得意な一方で、私たちリバーはどちらかと言えば効率化に長けていたりと、それぞれの特色を再認識することができましたし、だからこそお互いに学び合えることも多い場だなと感じています。
近年、日本のELV市場は海外からも注目されており、ここ数年は輸出量の増加傾向が顕著になっています。それは私たちにとって「飯の種が外に流れている」ことに他なりません。欧米の巨大なリサイクル事業者に対抗するために、私たちもこうしたBRの取組みを通じて“オールジャパン”としての結束を固め、自動精緻解体システムを筆頭としたサーキュラーなバリューチェーンを業界全体で育てていきたいですね。

酒井まさにおっしゃる通りです。ここで生まれた横のつながりが新たな共創やイノベーションが生まれるきっかけになってくれたら、それほど嬉しいことはありません。来年度からより大型のロボットを導入し、スケールアップした自動精緻解体にチャレンジする予定なので、引き続きご協力いただけたら幸いです。

天野佳依
リバー株式会社 第二事業部 ELV川島事業所
佐藤隆
株式会社マテック 石狩 ELV解体工場
久保修司
金城産業株式会社 愛媛オートリサイクル
本村高志
九州メタル産業株式会社 鳥栖営業所営業係
酒井麻光
株式会社デンソー CE事業開発部